畳屋の作業時間

畳屋の仕事は昔から日中の作業です。理由は、誤差1ミリを許されない寸法の精度が求められるからです。畳表は定規に合わせて切りますから、縦方向の明かりの位置で切るのが基本です。巾方向の明かりで切ると定規が影になり、寸法誤差が出ます。この為、夜間の作業は照明を点けても影になり、正確に切る事が出来ません。やむ得ず夜間作業をする場合は、寸法に関わらない仕事だけとしています。 能率は上がりませんが、品質保持には重要な拘りですので、宜しくお願いします。

手縫いと機械縫い

機械縫いと手縫いはどっちが良いかと聞かれますが、下手でなければ手縫いがいいですよ、と答えています。縫い方の理屈が、機械縫いと手縫いとでは違います。製造過程で使う機械によって完成度は違いますが、平均すれば機械縫いでは手縫いの60%程度の完成度でしょうか? 手縫いができなければ、機械縫いしても良い製品にはなりません。
出来るだけ手縫いの部分を残して、お客さまに自信を持って薦められる製品を、作りたいと思ってます。

目乗りのこだわり

畳表の目乗り(畳縁が畳表の谷に縫いつけられていること)は、中物(畳に囲まれている)の畳の場合、上前・下前、共に目乗りにします。

目乗り
目乗りにすると、畳縁が傷まず、躓く心配もありません。
上物(上等)の畳は総目乗り(上前・下前、共に部屋の全ての畳を目乗りにする仕事)に、仕上げる事もできます。


隅止めのこだわり

隅止めは、全て糸で縫い止めます(手縫い)。
釘止めをすると、錆が出て畳表が傷みます。釘止めは厳しく見ると、隅の畳縁が密着せず、畳の隅が古くなると丸くなります。大掃除の時に畳を上げると、畳縁がめくれる恐れがあります。

手縫いの隅止め
我が家の製品は新畳・表替え・裏返し、すべて糸で縫い止めています。近年、流行の縁無し薄畳もタッカー針等の釘は使用してませんので、古くなっても足裏に針が刺さる心配はありません。


紋縁付けのこだわり

紋縁は紋が合うように縫い付けます。寸法に紋縁を合わすように縫うのが技術です。

紋縁の四点(天)つけ
左の写真は拝敷きです。紋縁の四点(天)つけです。 縦・横の紋が合うように縫いつけます。紋の数が七・五・三になってます。


高麗縁と金七宝
拝敷きなどの四方縁は角を額縁付にします。
左の写真は角の額縁付けが良く判るように、畳縁を小紋の高麗縁と金七宝で製作しました。


縁無し畳のこだわり

縁無し畳は、畳表のひげの部分を、裏側まで折り込み、止めます。横で畳表を切ってしまうと畳表が引ききれず、畳表の折り曲げた箇所が、切れやすくなります。
畳表を十分に引くと、抜き先部分は少し下がったように見えますが、これは畳表の厚みの分だけ、折り曲げた箇所の浮きを抑え込む為に、畳表を引くからです。
縁無し畳で折り曲げた箇所が擦り切れたら、畳屋の恥と言われてます。

畳表の折り目付け
縁無しの畳表の折り目は、包丁で付けます。縁引きなどで折り目を付けると、畳表に傷が入り、裏返しができません。


しっかり折り目を付ける
手で折り、さらに金槌などで叩き、折り目をしっかり付けます。


完成
縁無畳の完成です。
畳表のひげの部分に、返しワラつけます。琉球表などの安物の縁無し畳は、蛇腹付けと言って、返しワラは付けない事があります。


表替え仕事のこだわり

裏返しや表替えでは、不要の糸や畳縁は取り除きます。
本来なら左の写真のが全てです。ところが過去の表替えの仕事で、古い畳縁・糸を除いてないので、右の写真のテイタラクです。

本来の量 古い畳縁・糸を除いてない

畳表と縁を新しく替えるだけでは、本当の仕事ではありません。「ゴミを残したままで、仕事をして情けない」と思いますが、これが現実なのです。畳屋のモラルが下がったのか? おそらく本当の仕事を教わって無いのが原因でしょう。

切り欠け仕事のこだわり

畳の切り欠け、小さな部分でも縫い付けます。

切り欠けの手縫い 切り欠け

畳屋としてのこだわりの仕事

2005年の初仕事 大畳製作

2005年の大畳
日本一大きい畳を目指して作りました。
サイズは巾・丈 六尺三寸(約190cm)、畳床は掛け縫いの手縫い床 28通り、畳表は美草表の大表を、畳縁は高麗縁の大紋を使用しました。

畳の種類の一番下にも「大畳」を掲載してます。